ガーデンカタログ
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「くつろぎ空間」としての、水まわりを考える。おしゃれを楽しみ、くつろいだ気分になれるもうひとつの「部屋」として、トイレや洗面室を位置付ける人が増えています。寝室と一体化させたり、リゾートホテルのような非日常感を演出したり…と、インテリアへのこだわりもさまざま。もはや「用を足す」だけの空間ではなくなった今、便器や洗面ボウルなどの水まわり設備にも、家具のような高いデザイン性が求められています。しかし一方で、気になるのはやはり衛生面のこと。いわゆる衛生器具が私たちの暮らしのなかでどのような役割を果たすものなのか、そのためにはどのような条件が必要であるかを改めて分析してみると、その素材には磁器製がもっとも適しているということが分かります。現代の焼き物に生きる、伝統の技。美濃焼とは、岐阜県土岐市を中心とした美濃地方の東部で生産される焼き物の総称。その歴史は古く、起源は古墳時代にまで遡ります。美濃焼が本格的な繁栄を築いたのは安土桃山時代のこと。千利休や古田織部らによる茶の湯の流行から“茶陶の世界”が生まれ、この地から「志野」「織部」「黄瀬戸」「瀬戸黒」など日本を代表する焼き物が作り出されました。現代では、食器類をはじめとする日用雑器や衛生陶器、工業用タイルなど多種多様な陶磁器を生産。国内シェアの約60%を占める一大産地となっています。歴史に培われた高度な技術は、日常使いの焼き物にも生かされています。土岐市在住の陶芸家・酒井博司氏の監修のもと作られた磁器製洗面ボウルは、花をモチーフにしたエレガントなフォルムが魅力。磁器特有の白い肌の上に咲く繊細な花模様は、釉薬をかけて器を焼成した後、さらにその上に加飾を施す「釉上銅版(ゆうじょうどうばん)」という技法で表現されています。釉薬が重なった部分に厚みが出るため、花模様が浮き上がって見えるのが特徴で、存在感のある洗面ボウルの佇まいが水まわりに華やかさを演出してくれるでしょう。374
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